まちづくりのこと、もっと気軽に話そうよ!
参加しやすいオンライン地域会議を開催

特定非営利活動法人フライパン
代表 横山宗助さん

会社概要

特定非営利活動法人フライパンは、芦屋市で「地域課題を調理する」をコンセプトに活動するNPO法人です。今地域で起きている身近な課題を、住民の皆さんと一緒に考えながら解消することを目的に設立しました。任意団体として約3年活動した後、2022年1月にNPO法人として組織化。子ども食堂やファーマーズマーケット、本や服の交換会、食のワークショップなど、地域住民が気軽に参加できる活動を通して、よりよいまちづくりを目指しています。「まちづくり」「市民活動」というとハードルが高いように感じられがちですが、フリーマーケットなど小さなイベントを開いたり、ミニコミ誌やSNSで発信したりすることもまちづくりの一つ。自ら行動する人が増えることを願って、活動をしています。

代表の横山さん。

本事業の応募きっかけ

団体を立ち上げて以来、主に地域課題に寄り添うイベントを自分たちで開催してきました。約4年経ちましたが、地域活動が住民を巻き込んで盛り上がっている実感が持てません。市民活動がごく一部の限られた人だけのものになっていては、本当の意味で地域課題の解決に結びつきません。これからは自分たちばかりが率先して街を盛り上げようとするだけでなく、同じような動きをする人やグループを増やしたいと考えるようになりました。そのために必要なのは「普及ソリューション」です。まちづくりや地域おこしのアプリは各地で開発されていますが、住民が楽しんで使って広く普及しているモデルはあまりない。それは、街を盛り上げようとする人たちが、実際の住民と密接につながっていないからではないか。そこで住民との距離を近くし、住民が気軽に楽しみながら参加できてまちづくりにもつながるシステムを構築しようと、今回の事業に応募しました。

活動拠点の芦屋市にて。

プロジェクト内容

二つのプロジェクトを実施しました。一つはスマホアプリの「LINE」を使ったオープンチャット「Ashiya Chat(あしやチャット)」。会員になると店舗のオープン情報や商店街のお得情報、街のトピックスなどを投稿しシェアできるチャットルームです。基本的には住民が知りたい情報が飛び交う気楽な場所ですが、その中に時々、芦屋の人口や所得の統計などの「まちづくりに関する情報」を混ぜ込んで発信するということをしています。それによって、参加者が自然とまちづくりに関心を持ってくれることを期待しています。

もう一つはオンラインのまちづくり会議「Fish or Chicken」です。市民のリアルなニーズを吸い上げるには、誰でも気軽に発言できる場が頻繁に開かれる必要があります。しかし実際に市民を集めて会議を開こうとすると大変な手間と費用がかかる。そこで、パソコンさえあれば誰でも無料で参加できるオンライン会議を毎月設定しました。急に「意見を述べてください」と言っても難しいので、問いを設定し「yes,no,other」の三択で投票してもらう方式です。画面デザインを工夫し、実際に会っているかのような「没入感」を提供することにこだわりました。投票結果をその場で画面に表示し、次にグループに分かれて話し合いを深め、最後にまた全員集まって再度投票を行います。議事録や投票結果はPDFで残し、いつでも閲覧できます。テーマは、子ども、子育て、公共交通機関、街の賑わいづくりなどさまざまです。

LINEの「Ashiya Chat」も、オンライン会議の「Fish or Chicken」も、チラシを1万枚作成して地域全戸にポスティングしました。参加しない人もチラシを見て意識の隅にひっかかっているかもしれない。「誰でも意見の言える場がある」と分かるだけでも、自分の街に対する印象がポジティブになると思います。

「Ashiya Chat」などの親しみの沸くチラシ。


まちづくり会議「Fish or Chicken」

プロジェクト成果

Ashiya Chatは開設から約3カ月で260人の参加があり手応えを感じました。現在も微増傾向です。おいしいお店の情報などが多いですが、中には「引っ越してきたばかりでゴミ回収日が分かりません」という書き込みに親切な回答が寄せられたり、「○○公園のライトアップが見たいけど足が不自由で行けない」と書いた人がいるとたくさんの写真がアップされたりと、交流が生まれています。普及率の高いLINEだからこそ、幅広い世代に使ってもらえている実感があります。

一方でFish or Chickenはこれまで3回開催しましたが毎回20人弱の参加にとどまっています。ウェブ会議システムはまだ生活に浸透していないことを痛感しました。ただ参加者の満足度はほぼ100%と高水準です。ある人が子育ての悩みを打ち明けたことから話し合いが深まったケースもあり、地元でリアルに起きていることを住民同士で話し合える意義を感じました。

将来ビジョン

Ashiya Chatの会員数は千人まで増やし、コミュニティとして育てたい。最終的に1万人、2万人まで増えれば、多くの人が告知にも使ってくれると思います。普段は楽しい街情報の交換の場で、ときどき私が真面目なまちづくりネタを混ぜていく、という場にしたい。Fish or Chickenは参加者数を増やす努力をしながら今後も継続します。リアルタイムで双方向のやり取りができ、多くの意見をスピーディに吸い上げられることがITの強み。会議で出たアイデアや意見を市にも届けられるよう、今後行政と連携を深めていきたいと考えています。

芦屋市への思いを語る代表。