健康経営をサポートするワーケーション
地域資源を活用した組織の健康診断プログラム

マルクファミリー株式会社
代表取締役 福山 秀仁さん

会社概要

マルクファミリーは、主にITを活用したプロジェクトの企画運営およびコンサルティングを行う企業で、2021年に洲本市で設立しました。「医・食/職・充」のサービス提供をミッションに掲げ、淡路島の活性化に寄与することを目的に事業を推進しています。もともと私はIT業界に15年以上従事し日本とインドで起業や経営参画を経験した後、2019年から兵庫県のIT企業誘致広報担当に就任。兵庫県内の地場産業を見て回るうちに自分自身で地域に根差した活動をしたいと考えるようになり、地域資源の豊かさに魅力を感じた淡路島で起業しました。現在は、地元事業者のオンライン工場見学会や淡路島のワーケーションプログラムの企画運営、地元サッカークラブ広報、地元事業者の事業開発コンサルティングなどを主な事業としています。

マルクファミリー株式会社 福山さん。

本事業の応募きっかけ

淡路島の地域資源とITを生かし、企業のワーケーションをアップデートさせる「ウェルネスキャンプ」を構想しました。従来のワーケーションは社員のリフレッシュが目的ですが、企業にとって効果が見えづらいため導入が進みにくいという課題があります。一方で、従業員の健康保持・増進を経営的な観点から重視する「健康経営」は近年広がりを見せ、関心の高い経営者は増加しています。
そこで健康経営の視点で付加価値の高いワーケーションコンテンツを淡路島で実施します。参加者の生体データを詳細に測定、結果をAI分析することで、個人には生産性を高めるために最適な習慣や行動を発見してもらうとともに、企業全体としては組織パフォーマンスの最大化を狙いとします。とりわけクリエイティブ系の仕事は労働環境が非常に重要ですから、人材の心身のコンディションを可視化、記録することはパフォーマンスの向上に有用であると考えています。実施にあたり、生体データ測定機器の入手やデータ分析体制の構築が必要であり、今回の事業に応募しました。

プロジェクト内容

ウェルネスキャンプは淡路島の自然を満喫しながら、客観的データから体の状態を把握できるワーケーションです。参加する人は事前に生活習慣やワークスタイルに関するアンケートに回答、期間中はウェアラブルデバイスを装着してアクティビティごとに心拍数や心電図、脳波などを測定します。それらのデータはAIが集約、可視化し、ご本人に情報提供します。宿泊型の人間ドックのような感覚です。自分にどのような習慣があり、どのような環境なら生産性が高まるかなどを把握でき、その結果を普段の環境にも生かすことで、個人単位でも企業全体としても作業効率向上に役立ててもらえます。
注目しているのは「睡眠」です。日本人は睡眠負債が多いとよく言われますが、寝る環境にこだわっていない人が多いことが要因の一つ。ウェルネスキャンプの中で睡眠の深さや質、時間、睡眠中の生体データなどを測定し、ご自身の睡眠習慣や課題を抽出してもらうことができます。さらに、淡路島の事業者と協働して、睡眠の質を向上させる食事の提供やサウナ、ヨガ、お寺での禅体験などのプログラムも作りました。宿泊施設も、グランピングなど複数パターンを用意しています。戻ってからの日常生活に自分に合う習慣を取り入れてもらえるよう、一つ一つのプログラムが持つ効果や意味の解説も行います。
個別の分析レポートは、ウェアラブルデバイスの仕様をシステムに落として作成します。デバイスはいくつか使っており、東京など関東のスタートアップ企業の製品です。われわれは業務上、医療的な助言はできません。可視化した情報を企業側で活用していただくサポートとして、労働環境や人材採用配置のコンサルティングサービスの提供を計画しています。

指のウェアラブルデバイスについて話す福山さん。

プロジェクト成果

現在、本格的な事業実施には至っておらず、テストツアーを行っています。主に関東の企業から参加していただき、データを蓄積している段階です。地元の社会人サッカーチームと共同で、良い眠りに誘うお香づくりワークショップを実施するなど、地域事業者も巻き込めるようになってきました。ただ、今はウェルネスキャンプのプログラムや宿泊施設の予約システムが連動しておらず、空き状況が共有できていない状態です。これらを連携させれば事業者間で情報を共有できるし、淡路島に今どのような来訪者がいるかということも一目で分かるので、システム化を急ぎたいと考えています。
テストツアーを実施して分かったのは、若手社員よりも経営層のほうが関心が高いようだということ。経営陣や幹部層に参加してもらい、自社に戻って横展開してもらうようなモデルを作っていきたいです。

将来ビジョン

これからウェルネスキャンプの事例を積み上げる中で、企業の実際のニーズを吸い上げ、整理、構造化して発展させていきます。また、淡路島が持つ魅力や地場産品、地元事業者の技術などをこの事業にもっと生かしたい。空き家を企業向け貸し別荘として活用する、企業ワーケーション専用の農地を確保して農体験プログラムを提供するなど、ウェルネスキャンプと地域資源が相乗効果を生む流れを構築したいです。事業の成果を地域に還元し、淡路島を「世界一幸せな島」にするという私たちの目的を達成するべく邁進します。