淡路島で作るスマートビレッジ

株式会社 農社
代表取締役 奥野竜平様
r-okuno@nosya.co.jp/090-3612-9101

会社概要

株式会社農社は、自社農園をベースとした農業技術に関する研究開発や農業コンサルティングをメイン事業とする農業サービス会社です。代表取締役の奥野竜平さんは2021年に福岡県から地元淡路島にUターンし、地域農業にフィットするスマート農業技術(IT、ロボティクス等)を探求しています。農業普及指導員の資格を持ち、生産面だけでなく経営や販路についても生産者に寄り添い、スマート商流の実現にも力を注いでいます。令和4年度の事業では、マンションやオフィスなど人の集まる場所に置く無人販売所『とどけもの』サービスの実証を行い、ローカルでの運用を実現しています。

農社奥野さん。自社農園にて。

本事業の応募きっかけ

研究開発やコンサルティングを進める中で、「スマート農業」に関心を持つ人は多く、自社だけ完結するのではなく生産者やメーカーなど関連する方々とともに歩むことができればと考えていました。例えばロボットの実証実験など、生産者とともに取り組めば技術の磨き上げを一緒に行うことができ、本当に使いやすいものを開発できます。メーカー側にとっても、よりよいものを作るには生産者の声が重要になります。機械化にはお金がかかるため懸念を抱く方もいますが、人手不足から農地を手放す農家さんも多く、避けては通れない現実があります。本事業では、スマート農業経営者を養成し、同時に過疎化や空き家等の地域課題を解決する「スマートビレッジ・プロジェクト」の実証に挑みました。また、スマートビレッジ・プロジェクトを通じて、地域農業関連サービスのDX化推進、農業IT人材の育成にも期待を寄せています。

プロジェクト内容

「スマートビレッジ・プロジェクト」の告知はSNSを通じて行い、近隣農家、技術者、大学生、研究者、行政関係者など、全国から幅広い顔ぶれが集まりました。WEB会議システムで行ったICT設備活用研修は第一線の講師陣に尽力いただき、最新の研究や農業情勢について学び、フィールドワークでは最新のスマート農業技術を通じた新しい農業を体感しました。スマート農業の事例を座学で学んだ後に、淡路島小麦プロジェクトを現地で視察。農業生産におけるデータの取得と活用方法について座学で学び、フィールドワークで農業生産現場におけるドローンの活用など重要性について体感する回もありました。全5回のうち、後半では参加者のITリテラシーの一層の向上を目的に、アプリ開発講義を開催しました。気温や水温管理等、アプリにどんな機能を持たせるかは作物や栽培条件によって異なりますが、まずは多くの農家さんに共通する作物の栽培日誌や農薬の在庫管理、出荷物の販売管理を基本とし、アプリの仕組みから解説します。今回は、生産者自ら手がけるアプリ開発が、実際にどのレベルまで到達するのかを検証する狙いもあります。スマートビレッジの実証を経て、課題も明らかになりました。継続する研修は生産者によっては繁忙期と重なることもあり、WEB会議システムはもちろん、アーカイブ配信の必要性を実感しました。フィールドワークは天候にも影響を受けるため、今後は各自のスケジュールで現地訪問できるよう考えています。また、研修会場となった農業倉庫は夏場、冬場の開催は気温的に厳しいこと、駐車スペースなども今後の検討課題です。

WEB上での会議風景。

スマートビレッジちらし

プロジェクト成果

研修の様子が神戸新聞に掲載されたことで新たな問い合わせもいただき、今回の事業を通してしっかりとニーズが確認できました。今回のような講師陣を招いての研修、フィールドワークの機会をかねてより温めていましたが、費用面で参加者の負担が大きくなることもあり、踏み切れずにいました。幸運にも今回の事業で「スマートビレッジ・プロジェクト」を実証できたことで次への大きなステップになりました。ご参加いただいた行政関係者の方々にも今回の取組の重要性をご理解いただけたらいいなと思います。

将来ビジョン

今回、淡路島に「スマートビレッジ」を開設しました。日本の農業は作物や土地によって同じ形態はないものの、共通する課題は多くあります。今後は各地でスマートビレッジを展開し、それぞれで蓄積されたデータや工夫が共有され、活かされていくことにも期待しています。将来的にはスマートビレッジと大学等の教育機関との連携が図られ、学生の研究や論文制作にも繋がっていくと思うと夢が広がります。また、淡路島の拠点である農業倉庫と民家にも手を加え、いつかは宿泊施設等も備え、長期滞在して研究が行えるような場になればとも考えています。