地方に眠る人材を掘り起こせ! オンライン事務代行の普及で「雇用×在宅ワーク」を広めたい
地方に眠る人材を掘り起こせ!
オンライン事務代行の普及で「雇用×在宅ワーク」を広めたい
株式会社万葉舎
代表取締役 尾上友美さん
プロジェクトマネージャー 國光洋志さん(ワーキングスペースSHARES代表)
会社概要
尾上さん)万葉舎は、事務代行サービスとンライン事務代行講座を主な事業としています。もともと私は事務職でしたが会社勤めが長く続かず、事務アルバイトを転々としていました。事務系は得意としているのに、このような働き方ではキャリアも収入も上がらないことにもどかしさを感じていました。姫路商工会議所が主催した起業セミナーで講師の方に相談したところ、「事務代行は需要がある」と助言され一念発起し、2019年に事務代行業を創業。すると思った以上に反響がありました。同じ事務作業をしても、ビジネスの形態を整えたことで収入が格段に増えたことは、衝撃的でした。そこで、同じようにスキルを持ちながらフルタイムで働くことの難しい人をサポートしようと、在宅ワーカー講座も2021年ごろから始めました。
本事業の応募きっかけ
尾上さん)事務代行業としては直接雇用の事務員1名と、委託ワーカー10名がいます。クライアントは地元・姫路と東京が同数程度で、東京は完全オンライン。姫路のクライアントは打ち合わせや書類の受け渡しに月一回は訪問する形が多く、直接コミュニケーションを取りながらの仕事を希望されます。やってみると、近くにいて「普段はオンラインで事務仕事を請け負い、必要に応じて会える」という関係が実は理想ではないかと感じるようになりました。他にも同じような働き方をしたい人がいて、仕事を出したい企業もあるなら、その間をつなぎたいと考えていたところに、國光さんから今回の実証事業業務のことを聞いて応募しました。
國光さん)東京に比べて姫路はオンラインも在宅ワークもまだまだ普及していません。しかし「事務だけ外の人に任せたい」という企業ニーズは少なくなく、一方、正社員としては無理だけど「在宅でできる範囲の仕事をしたい」という人も必ずいる。そこをマッチングさせることは両者にメリットがあり、地域の課題解決につながります。非常にすばらしい取組で、ぜひ私も一緒にやりたいと思いました。
プロジェクト内容
尾上さん)働きたい人と仕事を出したい企業、両方のパイを増やす事業を実施しました。まず在宅ワーク希望者向けのスキルアップ講座。個人がオンラインで受けやすい仕事として「オンライン事務、デザイン、SNS・ウェブマーケティング、動画編集、ホームページ制作・運用」の5講座を、各3日間開催しました。一方、企業向けには、在宅ワーカーを活用するメリットや利用できる制度についてのセミナーを3回開きました。今後、企業と在宅ワーク希望者のマッチングイベントを実施予定です。
実施体制としては私が責任者でプロジェクトマネージャーとして國光さん。他にシェアリングエコノミー協会には講師派遣や情報提供等でご協力いただきました。企画から一緒に動いてくれたのが、地元でレンタルスペース運営やイベント企画などを手掛けるLinkplus(リンクプラス)の福岡加奈さん。地域のお母さんたちを中心に幅広い人脈があり、実績も豊富で頼れる存在。他にも地域で活動する多くの方にサポートしていただきました。
今回のプロジェクトのテーマは「雇用×在宅ワーク」。互いのニーズが合う企業と人をマッチングして、最初は業務委託から始めて直接雇用に移行するケースも、初めから雇用するケースもあっていい。「雇用」や「在宅ワーク」の意味合いの幅を少し広げて、柔軟な捉え方を広めたいと考えました。企業のニーズは業種を問わずあると考えています。私は主に中小企業やスタートアップ企業からご依頼いただきますが、「何から依頼すればいいか分からない」という声が多い。私も一緒に業務の棚卸を行い「まずはここを切り離して任せましょう」「最終的にはここまでお願いしたい」というように時間をかけて打ち合わせをします。地元・姫路で「事務を切り離す」という意識が進めば、経営者は自分のやりたい仕事に集中し、在宅で働きたい人には仕事が回るという好循環が生まれます。
プロジェクト成果
尾上さん)スキルアップ講座は定員がすぐに埋まるほど盛況で、受講生は約50人。「パソコン一台で自分の可能性が広がった」「事務系の仕事は会社勤めだけだと思い込んでいた」などの感想をいただき、皆さん新たな発見をしてくださったようです。企業向けは集客に苦戦し、やはり姫路ではまだあまり認識されていないことを実感しました。ただ、私が強引にお願いして参加してもらった学習塾経営者の方は「すごく良かった、ぜひ導入したい」と言って、実際に現在オンライン授業の開講に向けて準備を進めています。ですから、潜在的な需要は必ずある、どう話を聞いてもらうかの策を今後練っていきたいですね。
このあと開催するマッチングイベントには企業側から10社ほど参加申込があり、もう少し増やしたいので広報をかけます。在宅ワーク希望者は子育て中も含めて主婦の方や、転職や新しい働き方を希望する方が参加されます。
将来ビジョン
尾上さん)今後有料の紹介事業に進出するよりも、「雇用×在宅ワーク」の文化を広めたい。
國光さん)働く側に在宅ワークの選択肢を伝えスキルアップをサポートすること、企業側に事務仕事を外部にシェアするメリットを理解してもらうことで、この文化が広まり地域課題の解決に近づきます。それが結果的に万葉舎の業績アップにつながると考えます。
尾上さん)私は姫路が好きなので、姫路だからこそできる仕事を創り出したい。姫路の事務代行業の先駆者になって、今もやもやを抱えている人の前に道を拓きたいです。今年はメンバーの育成に力を注いだこともあり業績は横ばいでした。人は育ったので、5年目となる来年は営業に注力。5年後の姫路を「オンラインの事務代行は当たり前」にするのが目標です!