デジタル活用でJA以外の販路があることを知ってもらえた

——地方ですといまだにJAに作物を収める農家が主流です。販路を自分で作るというのはハードルが高く感じる人も多いと思いますが、今回のプロジェクトで得た成果、効果はどういったものがあげられますか。

安達 本来なら香木茶の販売数など数字を打ち出したいのですが、今回は試験的なプロジェクトだったことと、採取する時期ではないなかで販売までの準備を行ったので、実数は出ていないのが現状です。

ただ、集落の方・参加した方の意識がガラッと変わったのが今回プロジェクトを開催した意義だと感じています。僕はなにか新しい事業を行うときは、集落の方にその内容と、どのぐらいの価格で販売するかといったことを包み隠さずお伝えしています。それがこの土地で事業を行ううえでの信頼につながるからです。

今回のプロジェクトに限っていうと、集落の方にとっては「ただそこにあるもの」と思っていた木が、的確なマーケティング、キレイなパッケージで販売されることによって「商品になり得るんだ」と気づいてもらえたようです。今まで農産物をJAに卸すしか手段がないと思っていた人に、新たな販路があると知ってもらえました。

さっきもお伝えしたように、参加者にとっても新たなスキルを得たり、協働のきっかけになったり、いい“出合い”があったと思います。

——丹波エリアにしかないものに価値を見出し、それを産業化するというのは安達さんがこれまでずっとやってきたことに通じますね。

安達 そうですね。僕が丹波篠山市に移住してから10年ほど経つのですが、はじめは自分たちが楽しいこと・自分たちができることをしたいと思っていたんですよ。でも、実際に事業を展開していくうちに、集落の方のおかげでできていると実感することが本当に多いのです。今度は自分たちの力によって、この地域や自然を守ってきた人に豊かになってほしい。豊かにもいろんな種類があり、もちろんみなさんある意味ではすでに豊かですが、労力に見合った対価を得てほしいのです。そういった意味では、今回の企画で参加者はもちろん、集落の人を巻き込めたというのはすごくいい事例になったのではないかと思います。

ITを活用すれば、都会の喧騒から離れてのびのびと生活しながら働ける。その充実ぶりを体現されている方でした

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安達さんはいま、丹波篠山市福住地域と、後川地域、2つのエリアのPRに取り組んでいます。福住地域は様々な職人を誘致しする活動です。パン屋さん、自転車工房、吹きガラスアーティンスト、レストラン、古民家ホテルなどのぞきたくなる店舗が並んでいます。

また、後川地域では、一棟貸し宿を中心に集落の方の産品を高値で買い取ることで地域を活性化させる取り組みをしています。今年には、宿の宿泊をきっかけにミシュラン2つ星の芦屋のシェフの移住を誘致しました。

田舎の良さをブランディングし、PRしていく。どんな地域からでも可能性を広げてくれるのが、ITの力なのだと、改めて実感しました。

text:佐伯香織(ハガツサ) photo:高田 遼

<会社プロフィール>
株式会社Local PR Plan

●住所
〒669-2513
兵庫県丹波篠山市福住1355

●業務内容
・PRコンサルティング
・地域PR計画
・宿泊施設、セレクトショップ等、地域PRコンテンツ運営