企業のSNS担当者に、映像制作会社の観点からバズる動画をレクチャー

——20人ほどの参加者の9割が女性だったということですが、参加者からはどういった反応が見られましたか。

大継 弊社としては、参加者のみなさんがどれほど動画に興味を持っているのか、という部分に不安を抱えながらプロジェクトを企画したのですが、みなさんが動画を情報発信の強力なツールだと認識しておられ、もっと深いところを知りたいといった意見をいただいてうれしく思っています。

企業や施設の広報/SNS担当者という参加者が多く、とても積極的に取り組んでいただいたと思っています。業務に使えるテクニックや理論が響いたという印象が強いですね。「どうやったらフォロワーが増えるのか」「どういった映像がユーザーに響くのか」といった、SNSマーケティングにも興味を持っているという印象です。

例えば、宿泊施設の人はお客様への訴求ポイントに「海の見える温泉」を挙げていらしたのですが、淡路島には同様の施設が多数あって差別化が難しい。2番目のポイントを聞くと「料理」とおっしゃるので、僕からは「調理人と相談して、映える料理を作っては」と提案しました。実際に自分たちが映像を取っていても、「これは視聴者に響かないのにな」と思いながら撮影することも多いのです。とはいっても僕たちは映像制作会社なので、目の前の素材を撮ることしかできない。でも旅館の人は「映えるための料理」を作ることができる。自分たちの経験から、そういった視点を提供できたのは今回のようなプロジェクトならではだと思います。

 

地元に人に「あわじしまっぷ」を活用してほしい

——動画クリエイターを養成するようなスクールですと、半年~1年の受講期間が設けられています。今回は3回とミニマムな規模でしたが、実施してみて難しさや課題はどういったところに感じましたか?

大継 全3回では編集まで伝えきれなかったというのが大きいですね。僕たちプロでさえ一番難しいのは編集・構成です。現在「あわじしまっぷ」に掲載されている縦動画は、海空で制作したものがほとんどです。参加者の方が作った動画を掲載すると、クオリティの統一といった面では難しいのが現状です。参加者や地元の方から素材をもらえれば、弊社で編集して掲載します。

その反省点があるので、縦動画講習を来年度以降も継続して行ってみたい気持ちがあります。ただ、動画をスマホで編集するのはプロでも扱いづらいですし、一般の人に「編集=難しい」というイメージをつけてしまう。本来ならパソコンがある環境でやりたいですね。

今回はコロナ禍の開催だったので、オンラインも併用しながらの講習という形になりましたが、対面だからこそ理解できる部分があったかもしれません。オンラインでは質問がしにくく、わからない部分があってもそのまま流していた人がいるかもしれない。withコロナ時代での開催を考えると、そのあたりの工夫が必要になってきますね。

また、今回は平日昼に開催したのですが、スケジュール調整の難しさもありました。みなさん、仕事の兼ね合いがあるなかでなんとか都合を合わせてもらいましたが、宿泊施設の人は「予約状況によっては全部には参加できなさそう」と二の足を踏んだ人もいました。

講座への参加者の多くは女性だったそう。「普段からスマホ、SNSを活用されている女性たちだからこそ、吸収も早かった」と、その可能性に大継さんも声を弾ませていました

——いまだパソコン向けの横動画(16:9)を掲載する観光サイトが大多数のなか、「あわじしまっぷ」は縦動画はもちろん、島全体の情報を網羅できるという点でも画期的な取り組みです。今後はどのように活用していきたいですか?

大継 「あわじしまっぷ」がローンチしたことで、情報発信のプラットフォームとして地元の方に提供できるようになりました。動画の素材さえいただけたら、こちらで編集してアップできます。ただ、現時点ではこの情報が縦動画講習会の参加者にしか伝わっていないので、もっと地域の方に参加してもらえるために認知度を上げていきたいですし、それがこれからの課題だと思っています。

弊社がこういった講座を行っていると知っている一部の淡路島の方からは、動画の講座をもっとやってほしいと言われています。今回は観光協会や宿泊施設の方の参加が多かったのですが、高校生といった学生向けの講座も要望されているので、地域を巻き込んでいくという意味では前向きに検討したいと思っています。

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もともとITに関する知識を持っていたり、そういった仕事に従事するポテンシャルを持っている人たちがいたとしても、そのスキルを活かせる仕事、場所がまだまだ都市部に限られている印象があります。

大継さんが取り組もうとしているのは、そのスキルを活用できる場の提供。「IT関連の仕事に就きたいと思ったら、淡路島に住みながら市外に通勤するか、淡路島を出るかという選択肢だけでなく、ここで暮らし、ここで働ける選択肢を広げていきたいですね」と、大継さんはにこやかに笑ってくれました。

text:佐伯香織(ハガツサ) photo:高田 遼

 

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