IT技術で丹波焼の未来を創る

株式会社YUZURIHA 吉見和浩様
丹波立杭陶磁器協同組合 理事長 市野達也様

会社概要

株式会社YUZURIHAは大阪・東京に拠点を持ち、上場企業を中心にDX/業務コンサルティングからシステム開発までを一気通貫で行い、数百万人規模のプラットフォーム開発・運用や、数千人が利用する基幹システム開発を行っています。これらの実績をもとに提案力・技術力が高く評価され、上場企業から出資を受けるなど、業務範囲を拡大しています。株式会社YUZURIHAでは、クライアントと対等な関係で、共に課題の解決に取り組みながら開発を行う「共創開発」という考え方を大切にしています。システム開発は手段であり、システムは道具です。システムを導入することが目的ではなく、本質的な課題や求めていることは何かをクライアントと共に考え、目的を達成していくことをミッションと考えています。

YUZURIHA吉見さん。支援先の『陶の郷』にて。

本事業の応募きっかけ

株式会社YUZURIHAの吉見さんは、2年前より丹波立杭陶磁器協同組合が直面する様々な課題の解決に取り組んできました。丹波立杭焼の郷「立杭」は、兵庫県の中東部、丹波の国の西南端に位置し、800年以上にわたり窯の火を絶やすことなく現在に伝え、約50の窯元が軒を連ねています。組合事務所のある丹波伝統工芸公園(陶の郷)は丹波篠山市の産業振興・文化レクリエーション施設で、観光物産センターは陶器即売場・陶芸教室を開設する組合の拠点施設です。理事長の市野達也さんは、人口減少、観光客の減少、職人のモチベーション維持等様々な課題に頭を悩ませてきました。吉見さんが支援に入った初年度は、春と秋に開催する陶器まつりの観光客が窯元をめぐるLINEスタンプラリーを企てました。そうしてデジタル化に取り組みはじめた組合の次のステップとして、今回の事業ではサプライチェーン課題の解決に取り組むことを決めました。

丹波立杭陶磁器協同組合の理事長 市野さん。

プロジェクト内容

陶の郷の窯元横丁では、窯元さんが作った作品を委託販売していますが、店舗の在庫確認や納品、陳列全てを窯元さん自身が行ってきました。丹波焼の窯元は50もあり、陶の郷を中心に南北約4kmにわたって点在している為、高齢化も進む中で毎日の在庫確認や納品は窯元さんにとって少なからず負担となっていました。そういった課題を解決して職人さんが作陶に集中できるよう、2022年からYUZURIHAがITコンサルタントとして課題解決に取り組んできました。今回の事業では、導入するシステムの運用や、窯元向けのアプリの使い方を窯元さんにレクチャーできる事務局職員を養成し、IT人材の雇用の受け皿を用意することが目標です。支援1年目に実施したLINEスタンプラリーやWEB集客を機に、事務局職員はじめ窯元さんの間にもデジタルの活用やその期待感が少しずつ浸透しはじめたことを感じました。特に、事務局職員には、窯元や来訪したお客様の属性や行動データなどの情報の価値を理解してもらえ、データを活かすことで今後取り組むべきことがわかる、という感覚を味わってもらうことができました。DX支援はツールの導入がゴールになってしまうことがよくありますが、まずはそれを扱う人のITリテラシーやデジタルコンプライアンスの意識を高めたうえで、正しく・安全に運用できる体制を用意することが重要です。私は具体的なシステムの導入を進める前に、まず事務局職員の皆さんに情報セキュリティ研修を受講していただき、パスワードポリシーやPCや各種メディアの安全な取り扱い方法など基本的なことの見直しからはじめていただきました。そして事務局職員の中からセキュリティ責任者を任命し、責任者によって毎月の研修実施や自主監査をしていただく仕組みを作りました。またグループウェアを導入してメールや各種リソース等のクラウド化と権限の整備を行い、機密情報をデジタルで取り扱う上で事務局職員が安全に情報を取り扱うインフラ基盤を用意しました。そうした1年に渡る準備を経て、旧型のPOSシステムをクラウドPOS化し、事務局と窯元のコミュニケーションや委託販売における在庫、売上、精算書を手元で確認できるアプリを開発し、その導入と運用を実現しました。

プロジェクト成果

アプリで作品の売れ行きが手元で分かるようになり、「窯元さんから『作品や売れ行きについて家族と話をするようになった』という声を聞くと、思い切ってIT化に踏み切ってよかったなと思います。」と理事長さんはおっしゃいます。また、週に一度のペースで納品に来られていた窯元さんがアプリを見て頻繁に来てくれるようになった、など他にも手応えを感じているといいます。2年間の支援を通して、理事長はじめ組合事務局の方々、窯元さんたちにはさまざまな変化を感じとっていただいていると思います。それゆえITへの理解も深まり、今後への期待も高まっていると思います。とはいえ、まだまだ道半ばであり、5〜10年後を見据えて、陶の郷を継続していく上ですべきことはたくさんあると思っています。

作家の個性が光る陶芸作品。

熱く議論を重ねる吉見さんと市野さん。

将来ビジョン

短期的には、大阪万博は丹波焼の魅力を伝える絶好の機会だと思っています。インターネットやSNSを使って丹波焼の魅力を広めることで、国内外の方に丹波焼をもっと知ってもらいたくさんの人にお越しいただきたいと考えています。また、丹波焼ならではの体験コンテンツを充実させ、良い「体験」を提供することで、体験した人が丹波焼を広めていってくださるような仕組みづくりをお手伝いしたいと考えています。長期的には、今回導入していただいた窯元アプリを窯元さんと組合事務局をつなぐプラットフォームとして活用していただくよう、コミュニケーション機能やものづくりにおけるサポート機能を充実することで、窯元さんの作陶の時間がもっと取れるようになるはずです。私は、丹波焼の魅力は作品はもちろん、それを生み出す窯元さんが一番の魅力だと考えています。窯元さんがこれからも素晴らしい作品を作り続けられるように、IT技術でサポートをしていきます。

丹波里と未来を創る二人。