インテリジェンス経営の思想を大学生にも
ITの力で世界のルールメイキングを知ろう

株式会社オシンテック 代表取締役 小田 真人

株式会社オシンテックの小田社長

会社概要

オシンテックは、「テクノロジーの力でオシントを」という思いで立ち上げた会社です。オシントは「オープン・ソース・インテリジェンス(OSINT)」の略で、一般に公開されている情報を洞察していくインテリジェンス手法です。私たちの主な事業である「RuleWatcher(ルールウォッチャー)」は、気候変動や水資源、人権などの国際的なルール形成に関わる一次情報を集めて提供するクラウドサービス。国境を超える世界の課題が増える中で、世界のルール形成に日本人がほとんど参加できていない現状への課題意識から開発しました。RuleWatcherで情報を検索、分析することにより、今世界では何が議論されているかが可視化され、経営戦略等に生かすことができます。

「RuleWatcher(ルールウォッチャー)」の説明

本事業の応募きっかけ

RuleWatcherに対し、「どこを読めばいいか」「レポートを出してほしい」といった問い合わせが増えました。自分にとって必要な情報を抽出し、使いこなすことができないためにサポートしてほしいというニーズです。しかし私たちがレポートを出すと、それは二次情報になってしまい、ユーザーが一次情報を読み解いていくことにつながらないと考え、インテリジェンス経営を学ぶ教育部門として「探究インテリジェンスセンター」を立ち上げました。

初めに取り組んだのは社会人向け講座です。グローバルに俯瞰する力や、多様な人たちと建設的に議論する力を高めてもらおうとプログラムを作りました。実際に受講された方からは「世界で今起きていることを知った」「生態系がこれほど深刻な状況に陥っているとは知らなかった」などの感想をいただきました。国会議員や官僚の方も多く参加され、自分のやりたいことに関する国際動向を把握すると同時に、政策立案にも生かしていかれました。この教育コンテンツを大学生や大学院生向けに再構成し、学生自らの動機を軸にした探究で国際動向への洞察力を高めるプログラムを提供したいしたいと考え、今回応募に至りました。

プロジェクト内容

社会人向けに展開していたプログラムを、大学生・大学院生向けに応用しコンテンツを作り直しました。大学の講義に落とし込むには、15回が1セットで、課題も必要になります。インプットとグループディスカッションをセットにしてアクティブラーニングの形を取ります。コンテンツ作成にあたっては、教育の専門家からアドバイスをいただきました。今回の事業費用は、システム構築費用やオンライン配信用システム構築にあてています。

テスト講義を神戸情報大学院大学、兵庫県立大学、関西学院大学、御影高校で実施しました。最初は、データの読み方や情報リテラシーの分野から始めます。例えば「新聞記事を批判的に読んでみよう」というテーマで、日本の新聞の経済記事と、その元となった一次情報を読み比べてみるとかなり印象が異なる場合があると実感してもらう授業などを行います。情報を取り入れるときには感情を排除して観察し洞察することも伝えます。「アメリカは好きでロシアは嫌い」などと思いながら情報に接すると、読み間違えるからです。情報の読み方のポイントを押さえることで見えてくる事柄は非常に多いので、学生時代にこそ身につけてもらいたい。そこを理解してもらうと、次の段階では自分で一次情報を検索・分析し、国際ルールのトレンドを知ったり、自分の興味のある社会課題の最新情報を読み解いたりといったことができるようになります。

学生の皆さんは高校までの期間に社会科や理科を勉強してきますが、それらの学習にあまり意味を見いだせていない。ですが、世界のルールメイキングや社会課題、地政学などを掘り下げていくと、ある時点ですべてがつながって見えてきます。今まで勉強してきたことが無駄ではなかったと分かる。世界の見え方やニュースの着眼点も変わるはずです。最終的には「今の国際動向から自分の『やりたい』を発見する」というところまで到達してほしいと考えています。

環境問題からも国際動向を読み取る

プロジェクト成果

世界の最新のルールメイキングを知った学生たちは、ビジネスにとって環境問題や人権問題の重要性が増していることに気づき始めています。「これからは世の中を便利にするよりもサステナブルにするビジネスが中心になる」「人権を守る意識がなければ事業活動はできない」という世界の流れを知ることは重要です。このような成果を受けて、インテリジェンス教育のニーズは高まり、各学校で導入意向があります。兵庫県立大からは博士課程向けプログラムの要請があり、対応を検討しているところです。プログラム内容は、授業を実施した大学や高校からのフィードバックを元に、現在増強中です。今回の取り組みを通して、インテリジェンス教育の推進が大学と地域の魅力向上につながるという理解が浸透してきた実感を得ています。

将来ビジョン

社会人向けおよび学生向けプログラム、今後発行予定の書籍などを合わせて「兵庫県発の教育コンテンツ」に育てたいと考えています。神戸を観察すると、世界の国際都市と通じる部分が多く、非常にポテンシャルが高い。農漁村も産業も文化もあり共生している神戸は、東京がうらやむ街になれると思います。大学生向けの教育は私にとってビジネスは度外視、社会貢献の思いで行っています。今後は留学生向けの講義も実施予定で、カリキュラムも国際化していきます。この地域でIT人材、グローバル人材の育成をし、地元での事業の成功をサポートしていきたいと考えています。