Project #07
インバウンド分野高度IT人材による、社会課題の抽出・解決伴走プロジェクト
——ノットワールド

「兵庫県地域IT人材育成事業」参加事業者インタビュー。今回お話を聞いたのは、地域課題を抽出しツアー企画や発信における人材育成に取り組んだ、株式会社ノットワールドの取締役・河野有さんです。

河野さんは、大手広告代理店に勤務したのち、中学・高校・大学が同じだった同級生の佐々木文人さんと2014年にノットワールドを創業しました。別々の会社に就職した2人が、1年間、一緒に世界一周の旅をしたときの経験を活かして、インバウンド領域でツアー企画やコンサルティングを行っています。

「国境を越えた結び目を創出し、みんなの人生を豊かにする」をミッションに掲げる同社が、本事業で選んだのは兵庫県丹波篠山市です。ツアーやガイド、情報発信の視点から丹波篠山市の人、まちの可能性に取り組みました。

 

ツアーの肝は、ガイドにあり

——最初にノットワールドの事業について教えてください。

河野 有さん(以下、河野) 当社の事業は大きく3つあります。外国人旅行者向けのツアー企画運営をするトラベル事業、地域課題解決に取り組む地域プロデュース事業メディア事業です。

コロナ前までは外国人旅行者にツアー販売をメインにしていました。ツアーに重要なのはガイドであるということで、ガイドのコミュニティ事業も2019年からスタートさせています。

地域課題解決に関する事業も行っています。ワーケーションを通じた地域課題の解決や当社のノウハウをまちの方たちに提供するお手伝いもしています。メディア事業について、現在は2つ。外国人向けの日本情報メディアと日本人ガイド向けに発信するメディアです。

——インバウンド関連の事業をすることになったのは、世界一周がきっかけだそうですね。

河野 はい。私と佐々木が世界一周をしていた時に、「日本はとても行きたいけど、旅行費が高い」とよく耳にしました。でも、食も宿もそんなに高くはないです。まだ知られていないことも多い、まずは宿からやってみよう、ということで起業したんです。

宿泊した人にツアーを勧めて、日本のローカルに行けるようにというのを目指してやっていました。ただ、いい物件が見つからず宿を諦めてツアーから始めました。ツアーは、欧米豪のゲストに英語でツアーを実施するのが大半でした。2019年は2万人程のゲストを受け入れていました。ゲストがどうやったら喜んでくれるか、感動するかを旅人目線でデザインするというのが強みです。

ノットワールド取締役の河野さん。

——コロナ禍でインバウンド需要が減少したり、現地ツアーの実施も困難になったのではないでしょうか?

河野 そうですね。行かなくても旅行の醍醐味を味わえるものとして、オンラインツアーもスタートさせました。現在までに180回近く実施して、7500人以上が参加してくれています。オンラインツアーを通して、地域のファンづくりをしてきました。

現地に行かなくてもわかるもので現地ツアーとの違いを見せるのがよいと思っています。食に関するツアーは比較的ハードルが低いので、商品を取り寄せて、製造者の話を聞きながら食べるといった内容を届けています。一つひとつストーリー付きで物を消費することができるというのは、オンラインのいい所だろうなと思っています。

中央区日本橋にあるノットワールドの事務所。現在、約15名程のスタッフが活躍しており、2022年2月に8周年を迎えました。

自社のチラシだけでなく、パンフレットの監修なども実施しています。

——よりよいツアーをつくりあげるためにはどんなことが大事なのでしょうか?

河野 ツアーガイドの質が一番大事だと思っています。日本を訪れる外国人観光客は年間3000万人。その中で当社が受け入れているのは年間2万人程度です。日本の観光に影響を与えるほどにはならないんですよね。

だからこそ、ガイドが就業する機会提供やガイドの単価を上げていく仕組みづくりが必要であると思っていて、ガイドの育成事業をスタートしたんです。今後は旅行会社であるサプライヤーとガイド、ゲストを結ぶプラットフォームの開発を目指しています。マッチングを促進させていけば、ガイドが仕事をしやすい環境が整い、ガイドに対する注目も集まると思っています。