Project #06
Eコマースを利用した但馬地域の地産外商を担うデジタル人材育成事業
——ダブルノット

「兵庫県地域IT人材育成事業」参加事業者インタビュー。今回お話を聞いたのは、但馬地域の事業者を対象としたEC事業を担える人材育成事業に取り組んだ、株式会社ダブルノットの代表取締役・高林努さんです。

鳥取出身の高林さんは、IMJグループや電通レイザーフィッシュなどデジタルマーケティング事業を手がける会社で事業戦略から構築まで幅広く携わり、その後、大手クラウドソーシングサービスの会社で事業責任者としてIPOを経験。2015年より三菱UFJリサーチ&コンサルティングに在籍しています。

ダブルノットの高林さんは、自社のオレンジパーカーと笑顔がトレードマーク。どんな人も明るく前向きにしてくれるエネルギッシュな方です。

約20年間、ITに携わってきた高林さんは、鳥取銀行と三菱UFJ銀行の地方創生協働プロジェクトへの参画を機に、故郷鳥取を元気にするためにできることを考えるようになりました。地域資源があっても鳥取には実行者が不足していることに気づいた高林さんは、地域で活躍できる「人づくり」をするため、2017年11月にEC運営支援事業を手がける株式会社ダブルノットを設立しました。

子育てがひと段落した女性たちがEC運営ができる人材に育ち、鳥取県内の事業者のEC運営サポートで大きな売上げを叩き出すまでに成長していることから、育成手法などで注目を集めている会社です。高林さんに、時代を生き抜く人材づくりの考え方をお聞きしました。

 

共に成長していく、実践型の人材育成

——今回、なぜ兵庫県地域IT人材育成事業で取り組まれようと思ったのでしょうか?

高林 努さん(以下、高林) 当社の事業拠点を兵庫県に設ける準備を進めていたタイミングだったからです。但馬エリア、特に豊岡市を当社の2拠点目として検討していたところでした。事業者との出会いや自治体との連携を考えてみたいと方々に話していた中で、本事業の募集を知ってエントリーしました。

——自社の特徴をどのように活かされプロジェクトを進行していったのでしょうか?

高林 当社のメイン事業であるEコマースの支援事業は、共同事業として売上げをパートナー企業様とシェアするビジネスモデルにしています。当社はネットショップの販促活動を担い、パートナー企業は必要な商品やサービスを提供していただき、一緒に成長をしていくのが特徴です。その中で、一から人材を育てる実践の場を提供しているというのも当社の強みです。そこを今回の事業で活かしたいと思っていました。

——そもそも、なぜ首都圏や都心部ではなくあえて地方で事業展開されようと思ったのでしょうか?

高林 地方におけるEコマースの価値の低さやITリテラシーの高い人材が不足していることに課題意識を持っていたからです。地方では、リアルの世界で店を構えるのに対して、ネットショップはつくらない、あるいは後回しになっていることが非常に多いと感じています。

ネットショップは、インターネット上につくられたお店です。店舗を担当する人材を育成し、売上げを伸ばしていくという点は、ネットショップも同様のはず。店舗を運営する店長、つまりITリテラシーやマーケティングに長けている人材が必要になってきます。ところが、地方ではネットショップの取り組みをしない企業が多く、そのためITリテラシーのある人材を雇用したり、育成できる環境がなかったりするんです。

新人のネットショップ店長もひとりで試行錯誤しながら取り組みます。(写真上)/ネットショップの運営だけでなく、チラシ制作など販促につながる施策を提案、実行することも。クライアントに伴走するからこそ積極的に提案を行います。

当社はインターネット店舗の運営が未経験の店長希望者を採用し、企業の商品やサービスを一から販売して、売れる人材を育てる実践型の教育をしています。企業のネットショップを成長させながら、その過程を通じて運営者作りをしていくことで、地方企業に貢献できないかと考えています。

——人材育成は時間を要するイメージです。ダブルノットが考える人材育成のポイントについて教えてください。

高林 人材を1年で育てるのは困難です。私は1年目にまずはやってみる、2年目で初めて課題を見つける、3年目でようやく市場に攻めていく、そんな3年計画で人材は育っていくと考えています。兵庫県は今回のIT人材育成事業を継続して実施することを想定して事業者を募集していました。長期的な視野の考えに、兵庫県の担当者が大変共感してくださったのは参画する後押しになりましたね。今回は「まずはやってみる」フェーズと捉えて、当社のプロジェクトを実施しました。