里山にある香木茶と米のブランディング! 過疎地の資源価値を再発見し、高単価産業へつなげる
Project #08
里山資源の活用・過疎地域の課題解決を実現するICT活用プロジェクト
——Local PR Plan
「兵庫県地域IT人材育成事業」参加事業者インタビュー。今回登場するのは、「里山資源の活用プロジェクト」を行った、株式会社Local PR Planの代表取締役・安達鷹矢さんです。
安達さんは、20代前半で楽天株式会社(現・楽天グループ株式会社)での「楽天市場」EC コンサルタントを辞め、関西都市部から丹波篠山市福住地区に移住。PRプランナー資格を生かして、地域PRコンサルティング会社を起こしたというユニークな経歴の持ち主です。ほかにも三田市の浄水メーカーのベトナム進出におけるWEB分野のサポートをしたり、里山ならではの景観が楽しめる一棟貸し宿「NIPPONIA 後川 天空農園」を運営したり、福住の旧小学校の空き教室でシェアオフィスを試験運用したりと、その土地が持つ価値を最大化し、産業につなげる役割に尽力されています。
そんなLocal PR Planが行った「里山資源の活用・過疎地域の課題解決を実現するICT活用プロジェクト」における「香木茶のEC展開」「米のブランディング事業『 Rice Terroir』」に迫ります。
地元の人にとっての「ただの木」が、事業資源になり得る!
——全国的に都市部の人口集中が強まり、地方の過疎化とそれが引き起こす就労問題が近年大きな問題としてニュースになっています。こういった状況を踏まえ、今回のプロジェクトにはどんな思いで参加されたのでしょうか。
安達鷹矢さん(以下、安達) 全国的に地方の過疎化が進んでおり、弊社が事業所を置く丹波エリアでも丹波市旧青垣町が「兵庫県過疎地域持続的発展方針」の指定を受けています。そこで、今回のプロジェクトは里山や過疎地の資源価値を再発見してもらいつつ、 ICT を駆使して地域資源を産業に発展してもらうために企画しました。
今回弊社が企画したプロジェクトは大きく2つ。ひとつ目は香木茶のEC 展開、2つ目は環境指標を数値化した米のブランディング事業「Rice Terroir」となっています。
——まずは香木茶プロジェクトから具体的な内容をうかがいます。もともと香木茶は御社のセレクトショップで販売していたものなんですよね。
安達 そうです。弊社が運営しているセレクトショップ「Littleaf」で3年前から丹波エリアの香木茶を販売しているのですが、とても好評で生産後数週間で完売することも。香木茶の珍しさや、観光客の「ここでしか買えないものをお土産にしたい」という購買意欲が人気の要因であることは間違いないのですが、クロモジの木の香り立つ味わいがなによりの魅力です。弊社としてもEC展開を考えていたため、これをモデルに参加者には地元の資源価値を再発見してもらい、デザインやマーケティングによって高単価を付けられる産業になると知ってほしかったのです。
——実際の香木茶のパッケージは、メインターゲットである女性が好みそうなデザインですね。たとえば、一般的なイメージとして農産物の味で勝負する商品は、デザインにはあまり力を入れていない、もしくは素朴なデザインという印象があります。
安達 そうですね。でも、やはりマーケティングやターゲットを意識したデザインというのは非常に大事です。今回のプロジェクトはそれを学んでほしいと企画しました。
実際の講習は、2021年10月から2022年1月まで6回行いました。まずはマーケティングの訴求ポイントを把握するために香木の採取や、製造過程の様子を動画や写真で撮影(第1・2回)し、販売時の宣材写真の撮り方等を学びました。
その後、マーケティング担当とデザイナーを講師に、実際のパッケージデザインを固めていく工程を見ながら、デザインの理論を学びました。パッケージはデザインの美しさはもちろんですが、マーケティングの要素も入り込んでくる。このあたりを理論的に学んでもらうことが目的でした(第3・4回)。
地域の商材を販売していく時、デザインの力は非常に重要です。どうしても地域では「安く・たくさん」を売ることが販売促進だと思われがちですが、購入する人の用途は様々です。今回は特にECで販売していくための「ギフト」ショップで販売していくための「お土産」に焦点を当てたパッケージの制作に取り組みました。
自分のために利用するものだと「いかに安く、お得に買えるか」は重視されるポイントかもしれません。ですが、ギフトとして人にプレゼントするものだと、一転その価値は薄くなり「安っぽくない、または安っぽく見えない、珍しいもの」が好まれます。この需要とマッチングすると、こう単価産業に繋がるということを踏まえたデザインのオンライン講座を開催しました。
最後に、PR動画編集の座学。マーケティングの観点からいうと、いまはYouTubeやInstagram、TikTokでの宣伝は外せません。動画撮影で抑えておきたいポイントやツールの使い方など、知識をインプットしてもらいました(第5・6回)。
今回は、大阪で動画制作やYoutuberのプロデュースの専門家にオンラインで編集工程をレクチャーしてもらいました。スマホ等で簡単に撮影・編集できるアプリケーションや、手ブレを防止するアイテムの紹介など、それぞれが個人でPRに関する動画を撮影・制作していけるような講座にしてもらったのです。
最終的には実際に香木茶商品を紹介するオリジナルサイトと、そこと相互リンクできるように「Yahoo!ショッピング」内に商品ページを設置し、販売の動線を確保しました。
——20~30代をメインに10人ほどの参加者がいたと聞いています。反響はいかがですか?
安達 普段から弊社の事業に主体的に参加してくれている人が多く、デザイナーやエンジニアといった職種の人が集まりました。ただ、実際「デザインは日ごろから業務で行っているけど、動画の知識はない」という人が多く、身近なようで実はまったく異なるスキルを学ぶ機会になったようで喜んでいただけました。
参加者同士も「あなたはこれができるの? じゃあ今度こういったことを一緒にやってみない?」といった話をしていて、今後の仕事のきっかけになる場にもなっていました。