Project #09
スマートフォン向け淡路島観光情報サイト「あわじしまっぷ」開設と縦動画講習
——海空

今回「兵庫県地域IT人材育成事業」参加事業者インタビューに登場するのは、スマートフォン向け淡路島観光情報サイト「あわじしまっぷ」のローンチとサイトに掲載する“縦動画”の撮影・編集講習(以下、縦動画講習)を行った、株式会社海空の代表取締役・大継康高さんです。

京都に本社を置く海空は、テレビ・CM・プロモーションビデオなどの動画制作やイベント企画・運営がメインです。代表の大継さんは淡路島出身で、一度は島を離れて就職したものの、外に出てみて淡路島の魅力を再確認したそう。海空が企画運営した、『うみぞら映画祭』(淡路島で開催)などを通じて地域の人とのかかわりが増え、淡路島にも新オフィスを展開し、地元の人を雇用したいと思うようになったそうです。

大継さんが故郷・淡路島での活動を広げるきっかけになった、『うみぞら映画祭』の様子

そんな海空が「兵庫県地域IT人材育成事業」を通して実現した、スマートフォン向け淡路島観光情報サイト「あわじしまっぷ」の開設と、そこに掲載する縦動画講習への思いについて聞きました。

 

3市に分かれる淡路島の総合的な情報サイトを作りたい

——淡路島は神戸市や有馬温泉などと並ぶ、兵庫県の人気観光地です。ただし、近年はコロナの影響もあって、観光客が減少しています。常に新たな情報を発信していくことが観光地のマーケティングには欠かせませんが、今回のプロジェクトにはどんな思いで参加されたのでしょうか。

大継康高(以下、大継) そうですね。もちろん、淡路島を盛り上げるためになにかしたいという気持ちが第一にあります。弊社も仕事を通じて淡路島の人たちと関係が深まっていき、淡路島にオフィスを構えて、現地の人を雇用することを考えていたのです。実は淡路島には、結婚などを機に移り住んだという、IT関係の仕事の経験者が少なくないことも見えてきていました。でも、淡路島にはそのスキルを生かせる仕事がない。ならば、そうした方々の活躍の場を提供するとともに、雇用を見据え、動画を撮影・編集できる人を増やしたいと考えたのが、まずひとつの動機です。

もうひとつの動機として、淡路島全体を中立的に紹介するようなサイトを作りたいと思ったことがあげられます。淡路島は3市に分かれていて、島全体としての情報発信ができていない。観光客が知りたい情報を中立的に発信できるフォーマットがなかったのです。弊社は以前から島全体の情報を発信する「あわじしまっぷ」を構想していたのですが、自社だけでやるには経済的な負担が大きく、なかなか動かせていなかった。今回のプロジェクトでは実験的な試みもかねて、再起動できたという感じです。

現在海空は、学生たちの居住地にもなっているシェアハウスの一角を淡路島オフィスとして使用中

——そのプロジェクトについて、具体的にどんな挑戦をされたのか教えてください。

大継 まずは「あわじしまっぷ」のローンチですね。掲載する観光施設や店舗の情報は観光協会から提供してもらいました。その上で縦動画講習を行い、参加者の動画を「あわじしまっぷ」に掲載するという予定を組みました。

——「あわじしまっぷ」はスマートフォンで見ることを想定したつくりになっています。掲載する動画も、あえて“縦動画”に絞ったのでしょうか?

大継 JTB総合研究所の調査では50%を超える人が、旅の宿泊予約にスマホを使っていますし、旅行の情報収集もみなさんはスマホを使いますよね? 加えて、InstagramやTikTokといったSNSの“縦動画”は見慣れており、そういったSNSを使って旅の思い出を共有するのが当たり前になっています。それを考えると、情報サイトも縦動画のほうが、親和性が高いなと思ったのです。

海空の大継さんは、週の半分を京都で、木曜、金曜あたりから週末にかけてを淡路島で過ごしているのだとか

——実際の縦動画講習は、12月~2月にかけてオンライン講座を3回実施されていますね。どういったことをレクチャーしたのでしょうか?

大継 1回目は、そもそもなぜ縦動画なのか。縦動画の仕組みや構成、TikTokの概要などの説明をしました。例えば、「TikTokなら冒頭3秒に閲覧者の目を引く映像を持ってくる」「入れたい要素を絞る」「絵コンテを準備すれば効率よく撮影ができる」といった基本的なポイントをレクチャーしました。

1回目の終わりに、参加者の紹介したい施設やスポットを撮影するという課題を出し、2回目はそれを持ち寄って、音楽の乗せ方などの「編集」に重点をおいて講義しました。

3回目は応用編。参加者から「プロとしての撮影のポイントが聞きたい」という要望を受け、「どうやったら伝えたいことが伝わる動画になるか」をテーマに、例として「料理をおいしく見せるための撮影時の照明の角度」などをお話ししました。また実際に参加者が作った動画を見ながら公開フィードバックなどを行い、些細なことだけど知っておくともうワンランクアップしたクオリティとなるポイントを伝えました。

▼実際に参加した人たちが撮影した素材を、大継さんのレクチャーによって編集した動画がこちら

——先ほど、淡路島全体としてまとまっている中立的な観光サイトがないというお話をされていましたが、今回のプロジェクトでその課題は解決されましたか?

大継 縦動画講習には宿泊施設の方、観光施設の方、そして県民局といって兵庫県職員の方が多く参加していただけました。こちらが意図したわけではないのですが、参加者の地域がばらけていたので、結果的にいろんな地域の情報が得られる形にはなったと思います。