Project #03
地域内のものづくり事業者を中心とした、ものづくりDX推進事業
——コバコ

今回登場していただくのは、「ものづくりDX推進事業」を行った、コバコ株式会社の代表取締役 谷口悠一さんと共同代表 谷口慎哉さんご兄弟です。

姫路から電車で1時間。岡山県との県境にある佐用町出身のおふたり。兄の悠一さんは公認会計士・税理士として、弟の慎哉さんは大阪で空間デザイナーとして別々に活躍されていましたが、「もっと地域に寄り添った活動がしたい」と当時一緒に活動していたメンバーと「ローカルからワクワクするしごとを創ろう」をミッションに、2017年にコバコを創業したそうです。

ビジネスやクリエイティブ、テクノロジーの専門分野を持つ仲間とともに、地元企業の新規事業創出支援などのコンサル事業、泊まれるコワーキングスペースやカフェの運営など、地元で働く人やこれから佐用町で働きたい人のためのワークデザインを行っています。

コバコの拠点は、カフェの奥がコワーキングスペースになっていて、さらに奥に宿泊スペースがあります

そんなコバコが「ひょうご次世代産業DX導入・人材育成プロジェクト」に参加し実施した、「ものづくりDX推進事業」とは。

 

DX化で雇用を生み、佐用町を拠点にする人を増やしたい

——コバコがプロジェクトを実施した佐用町は、人口約1万6000人弱の町です。近年では役場が主導して「空き家バンク」を運用するなど、地域としては「人口減少」に対する課題に取り組まれています。そうしたなかで、今回このプロジェクトに参加するにあたり、どんな思いを持たれていたのでしょうか?

谷口悠一さん(以下、悠一) コロナ禍でDXに向けた大きな波がきてはいますが、中小企業の多くはコストや人材面の課題があり、DXに取り組めていないのが現状だと思います。佐用町も例外ではなく、なかなかDX化が進んでいません。

そういった状況を踏まえて、今回のプロジェクト「ものづくりDX推進事業」は、ものづくり事業者を中心とした地域の方たちへのDX導入のきっかけづくりや、地元企業のIT人材育成への貢献を目的に企画しました。

コバコのすぐ横に会計士事務所を構えている悠一さん。長らく空き家だった場所を地域のために活用しました

谷口慎哉さん以下、慎哉) 佐用町は、のどかで美しい町です。少し足を延ばせば姫路や神戸にも出られますし、生活するにはちょうどよい場所だと思います。この生活環境のよい場所で自分の好きな仕事ができるということは、これからの時代、とても魅力のあることではないでしょうか。

しかし、ローカルと都市をフラットに結んでクリエイティブな仕事を発信するには、DXは欠かせません。DX化により新たな雇用を創出できれば、就職などで地元を離れた人や、Iターン希望者なども、佐用町を拠点にできる。

これが、我々コバコが目指すことであり、今回のプロジェクトの目的でもあります。

——佐用町は、木材素材の生産、家具などの木工、皮革加工などのものづくり事業が盛んだと聞いています。町内には市民工房のネットワークである「ファブラボ」の施設があり、ものづくりに対する土壌があるかと思いますが、今回の「ものづくりDX推進事業」は具体的にどんなことを行ったのでしょう?

悠一 佐用町ではIT人材が不足していて、最新のIT技術や情報に触れる機会が少ないこともDXが進まない要因なんですよね。そこで、町内にあるデジタルからアナログまでの多様な工作機械を備えた「ファブラボ西播磨」さんと連携して、CNCマシニングセンタ(※)などのデジタル工作機械を活用した、デジタルものづくり体験会を実施しました。

体験会では、地域内の事業者さんが人手を使って制作しているものをデジタル工作機械で試験的に作ってもらう、ということをしました。

参加者も、パソコン上のものが形になっていく過程を楽しんでいたそう

また今後の予定では、地元事業者さんと連携して、最新のIT技術を知ってもらうセミナーも開催予定です。

さらに、動画コンテンツで「デジタルものづくり」が学べる環境づくりも、今後進めていきたいことですね。体験会に参加できなかった方たちにも、動画をみて3Dプリンターやレーザープリンターなどのデジタル工作機械をうまく活用していただけたらなと思っています。

慎哉 デジタルものづくり体験会には、地域住民の方に参加いただきました。体験会は、ピザや飲み物を用意した“ピザパーティ”で参加者同士が交流をしながら、デジタル工作機械の使い方を体験するというスタイルでしたが、勉強会という堅苦しい雰囲気ではなく和気あいあいと楽しんでいただきながら、DXに触れる機会になったのかなと思います。

悠一 参加者に希望する形状をデータ作成していただき、切削実技、CNCマシニングセンタを活⽤した加⼯の⼀連の流れを体験していただきました。切削実技については、高速回転する刃物を扱うため、まだ管理者のサポートが必要でしたが、データを作成して切削する⼿前まで準備することができるようになりました。