作り手の想いを「知る」、消費者の声を「知る」ことの大切さ

——体験ツアーで、一般消費者や地場産業に関わる人たち双方にとって、「相手のことを知る」というきっかけや気づきになったようですね。実際に実施してみての成果や、また新たに見えてきた課題などはありましたか?

五十嵐 今まで何気なく商品を購入していたエンドユーザーの方たちに、パティシエが数ミリ単位でスライスする姿や、良い牛を育てる工夫だったり、そういう職人的なこだわりや誇りという部分を目の当たりにして、商品の良さや作り手の想いに触れ、発見や親近感を持っていただいたところはよかった点ではないでしょうか。

実際、参加者のアンケートでも、90%以上の方が「おもしろかった」「またこういう体験ツアーがあったら参加したい」と答えてくれました。

 また、地場産業の方々については、これまで発想になかったITを使ったPR方法の体験や、参加者の反響を直に感じてもらい、「やってよかった!」と思っていただいたところが一番の成果かなと思います。

 渡邊 課題というところでは、新規のご協力先を探す上で、地場産業の現場は年齢層が高く、業務のほとんどがアナログで、ITを使った取り組みの想像がつかないというところがあります。賛同して「やろう!」と思っていただくまでに苦労しましたね。我々世代がこういったITに触れるきっかけをつくっていかなくては、というところは課題に感じています。また、会社を運営されている方々が、ご自身でDX化を進めてITスキルを習得していくにはまだまだ時間がかかりそうだな、と感じています。

——五十嵐さんは「教育」、渡邊さんは「旅行業」という違ったフィールドをお持ちですが、今回のオンライン体験ツアーは、お互いの持つ強みを活かした取り組みでしたね。今後、おふたりが目指すところややっていきたいことはありますか?

五十嵐 今回のプロジェクトは、地場産業の方が楽しそうに取り組んでくださり、またツアー参加者にも喜んでいただき、非常にやりがいを感じました。また、私自身の学びが多かったことから、地場産業の方たちの取り組みは今後も何らかの形で続けていけたらと思います。

あと、これは今回のプロジェクトとは少し異なりますが、自分のフィールドの教育で考えると、コロナ禍で増えた不登校の子どもたちに向けたオンラインツアーなどもできるのではないかと可能性を感じています。

渡邊 弊社はオンラインツアーにも力を入れています。これまで参加してくださったお客様の層は中高年の方が多かったのですが、今回のプロジェクトには、五十嵐さんのネットワークから多くの10代20代の方が参加してくださいました。若い方たちにもこういったオンラインツアーは響くんだなという感触と手応えを得られたので、今後も若い世代のお客さんと地場産業との架け橋となるような企画を進められたらと思います。


このオフィスに渡邊さんが入居したのも、五十嵐さんのお誘いがあったからだそう。新たな協業にも期待です!


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五十嵐さんは前職の異動で淡路島に移住したことがきっかけで、兵庫県に魅せられたのだと言います。地元でも学生時代を過ごした場所でもなく兵庫県から、世界の子どもたちの未来を明るくするために活動するうちに、日本、そして地元のことを知る大切さを実感し、神戸や地場産業の魅力を発信し活動している渡邊さんと出会いました。

そんなおふたりが今回のプロジェクトで実現したのも、やはりデジタルで世界を広げることでした。「ほかにもいっしょにやってみたいことがある」と笑い合う様子に、期待をせずにはいられません。

text:本間香奈(ハガツサ) photo:高田 遼

 

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