まちを語れる人を増やす。発信やツアー企画で、ITツールを駆使できる人材を育てる
ガイドできる人材が、丹波篠山市を面白くしていく
——さまざまな地域の課題解決に取り組むノットワールドが、今回兵庫県地域IT人材育成事業にエントリーしたのはなぜでしょうか?
河野 僕は兵庫県川西市出身ということで、兵庫県との縁がありました。また、2年前に知人から新温泉町の課題解決プロジェクトに誘われて関わっています。その時のチームの方から今回の事業の話を聞いて、応募しました。
丹波篠山市に関して旅行界隈では「なんか面白いところがあるぞ」というのは聞いていました。本事業以前の2021年3月には丹波篠山市のオンラインツアーを実施していて現地の方を知っていたのもありますね。素敵な場所ですし何か取り組みがしたいと市役所の担当者に連絡を入れたんです。担当者の想いも聞くことができ、やりたいことを叶えられることがまちの人たちにとって一番よいことだと考え、今回の事業を当社のプロジェクトとしました。
——本事業では具体的にどのようなことを実施しましたか?
河野 今回はマッチングと課題解決の2つのフェーズに分けて取り組みました。丹波篠山市役所の担当者と当社で地域課題を洗い出し、日程を組んで地域の方たちに集まってもらいました。20人弱くらいが参加してくれましたね。役所や観光関連の事業者、農家さん、丹波焼の作家さんもいたりと多様な人が集まりました。
マッチングのフェーズでは、12月に2日間のワークショップを実施して、自己紹介や参加者の強みや悩みを共有し、自分たちの課題をプレゼンテーションしました。県外から各業種の専門家も招き、参加者は5チームに分かれてプロの話を聞きながら、最終的には「この人のプロジェクトに関わりたい」というのを選択してもらいマッチングしていきました。
——プロジェクトにはどのようなものが出されたのでしょうか?
河野 アイデアは4つ出されました。インスタグラマーによる写真撮影と発信の教室、丹波篠山エリアの自転車ツアーガイド育成、丹波焼の作家さんの作り手のストーリーがわかるメディア、農業と観光の距離を縮めるコミュニティづくりです。
本当は2案くらいのアイデアで実践するのを想定していたのですが、参加者のアイデアが面白かったので、それなら全部やっちゃおうとなりました(笑)。
——12月にマッチング会を開催したあと、2022年3月までの間に出されたプロジェクトを実施していったのですね。
河野 怒涛のスケジュールでしたね(笑)。インスタグラマーによる写真教室と発信教室は力を入れて取り組みましたね。ITツールやSNSツールを駆使できるのは重要ですので、まずは発信の仕方を学べる機会として、日本人向けのインスタグラムの発信方法を知っていただく機会としました。市役所の担当者も参加したのですが、劇的によくなってて(笑)。写真の撮り方や加工方向、言葉の入れ方などもうまくなっていました。
——自転車ツアーはインバウンド向けを想定してガイドの育成を実施されたのでしょうか?
河野 自転車ツアーのガイド研修を3回実施しました。今回は自転車好きの丹波篠山の人によるツアー企画と京都でインバウンド向けサイクリングツアーをしている講師を招いたツアー研修を実施しました。
自転車愛の深い地元の自転車屋さんがガイドを務めたサイクリングツアーでは、その方は日本人向けのガイドしか経験がなかったので、京都で長い間サイクリングツアーをやっている方を呼んでインバウンドツアーの研修もしました。参加者の中には、丹波篠山市内で自転車ガイドをやってみたい人たちもいたので、iPadを活用したツアー企画の実践とインバウンド向けのツアーガイド研修とダブルの人材育成をした形です。
——ガイドがITツールを活用できるようになったり、丹波篠山市でガイドができる人が増えるということで、ツアーから観光需要の掘り起こしや地域の盛り上がりにつながっていきそうですね。
河野 短い時間でしたが、参加者の成長を聞くと体験することの大切さを改めて感じましたね。参加者の中には、ゲストハウスを運営していて英語が話せる方がいました。こうした方が今後ツアーを実施できるようになれば、ゲストハウスとしての厚みも増すし、ガイドがひとりでも増えれば丹波篠山市にとってもメリットがあります。全員が地域の良さを語れるガイドになればもっと地域は魅力的になるはずです。